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元バスケ部顧問が解説するブラック部活とスポーツハラスメントの境界線

こんにちは、なおじです。
ここ数年、「ブラック部活」や「スポーツハラスメント」という言葉をニュースやSNSで目にする機会が一気に増えました。
ただ、現場の生徒や保護者、若手の先生たちにとって一番わかりにくいのは、この点です。
「どこまでが厳しい指導で、どこからがハラスメントなのか」という境界線ですね。

この記事では、元社会科教師・元バスケ部顧問としての視点から、ブラック部活とスポーツハラスメントの境界線と、防衛策・構造的な問題を整理していきます。

この記事でわかること

  • ブラック部活とスポーツハラスメントの具体的な定義
  • 厳しい指導とハラスメントを分ける3つの視点
  • 今の部活で増えている「精神的追い込み型」の実態
  • 生徒・保護者・若手顧問それぞれが取れる防衛策
  • 日大三高・広陵高・仙台育英の事例から読み取れる構造の問題
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目次

ブラック部活とスポーツハラスメントの境界線

ブラック部活・スポハラとはどんな状態か

「ブラック部活」も「スポーツハラスメント」も、法律で厳密に定義された言葉ではありません。
しかし、過酷な部活動の実態を可視化するために使われる、重要な概念です。

一般的には、過度な長時間活動、休養の欠如、成績至上主義、人権を無視した指導が常態化している状態を「ブラック部活」と呼びます。
教育的な意義よりも「伝統」や「勝利」が優先され、生徒の声が届きにくい構造がある部活です。

一方、**スポーツハラスメント(スポハラ)**とは、暴力・暴言に加え、人格否定、過剰な叱責、競技からの排除など、スポーツ指導の場で行われるあらゆるハラスメントを指します。
ブラック部活は「活動全体のあり方」、スポーツハラスメントは「指導場面での具体的な行為」と考えると、少しわかりやすくなります。

成果につながる「厳しさ」の3条件

とはいえ、「厳しい指導」がすべてハラスメントかと言えば、そうとは限りません。
かつてなおじがバスケットボール部の顧問をしていたとき、きつい走り込みや基礎練習を課す場面はたくさんありました。

その中で意識していたのは、次の三つです。
①なぜこのメニューをやるのか説明すること。
②いつ終わるのか、見通しを示すこと。
③終わったあとに必ずねぎらいの言葉をかけること。

この三つがそろっていると、生徒は苦しくても「やり切った」と感じやすいものです。
逆に、理由も説明されず、いつ終わるかもわからない負荷が続くと、同じメニューでも「鍛えられている」ではなく「支配されている」と感じてしまいます。

「境界線」が見えるのは人格を責めた瞬間

境界線がもっともはっきりするのは、プレーではなく人格を責め始めたときです。
「今のパスは危なかったね」「さっきの守備のポジションが甘かったね」は、プレーの振り返りです。

しかし、「お前は本当にダメなやつだ」「チームの足を引っ張っている」は人格の否定になります。
さらに、「逆らうと試合に出さない」「親に言うと進路に響くぞ」といった言外のメッセージで生徒を縛るのは、恐怖による支配です。

子どもたちが「怒られるのが怖くて」本当のことを言えなくなった時点で、そこは教育の場とは言いにくくなります。
ブラック部活やスポーツハラスメントは、この「恐怖で支配する構造」が続くことによって固定化していくのです。

ブラック部活で増えている“精神的追い込み”型

体罰が減った裏で増えてきたもの

法律や社会の目が厳しくなったことで、昔のような「平手打ち」や「ゲンコツ」は確実に減りました。
これは、大きな前進です。

ただ、その裏で目立ってきたのが、**言葉や態度による「精神的追い込み」**です。
殴ることはしないけれど、ミスをするたびに人前で長時間立たせて叱責する。
グループチャットで深夜まで反省を求める。

外から見ると「暴力はないから大丈夫」に見えても、当事者の心の中では毎日が灰色になっていることがあります。
ブラック部活は、体罰がなくなれば終わり、という単純な問題ではありません。

「お前のせいで負けた」型の追い込み

精神的追い込み型で典型的なのが、負けの責任を特定の生徒に押し付ける指導です。
試合はチームスポーツであるにもかかわらず、一人だけをスケープゴートにしてしまう。

「レギュラーになれないのは努力が足りないからだ」と、結果のすべてを生徒個人の根性の問題にしてしまう言い方も要注意です。
努力や成長を大切にすること自体は必要ですが、指導者側の準備不足や采配ミスが一切認められないと、チーム内に息苦しさが蓄積していきます。

テスト前だけ急にやる気を出す生徒、クラスにもいましたよね。
怒られ続けると、人は「どうせ自分はダメだ」という方向に傾きがちです。

連帯責任・長時間拘束・SNS圧力という新しい形

近年のブラック部活で問題視されるのが、「連帯責任」と「長時間拘束」、そしてSNSを通じた圧力です。
誰かがミスをするとチーム全員が居残り・罰走というやり方は、表向きは団結を促しているようで、実際には「誰かが失敗するとメンバーに迷惑がかかる」という恐怖を植え付けます。

グループチャットで深夜まで反省を求めたり、顧問が個人アカウントに長文メッセージを送り続けたりするのも、休息時間を侵食するスポーツハラスメントの一種です。
学校のグラウンドだけでなく、スマホの画面の中にまで「部活の空気」が入り込むと、生徒が心を休める場所がなくなってしまいます。

👉関連記事:部活動のパワハラ・いじめ|どう防ぐべきか元教師が語る

スポーツハラスメントのチェックポイント

NGワード・NG行為の具体例リスト

ここで一度、スポーツハラスメントに当たりやすい言動を整理しておきます。

種別具体例
人格否定「お前はバカだ」「生きている価値がない」
公開叱責チームメイトの前で長時間立たせて怒鳴る
排除・無視理由を告げず試合メンバーから外す
強制的拘束休日を返上させる、過度な長時間練習
セクハラ体型や外見への執拗なコメント、不必要な身体接触
SNSハラスメント深夜の長文連絡、個人アカウントへの一方的な指示

「冗談だから」「愛のムチだから」という言葉で正当化されていないか、日常的に振り返ることが大切です。

指導か支配かを見極める3つの視点

なおじが実際に顧問として意識していた視点を三つ紹介します。

第一に「目的が説明されているか」
きついメニューでも、何のためにやるのかが具体的に説明されていれば、指導の要素が強くなります。

第二に「選手に意見や質問の余地があるか」
言い方が厳しくても、「こうしたい」「こう感じている」と伝える場が確保されていれば、ブラック部活的な一方通行にはなりにくい。

第三に「相談窓口が複数あるか」
顧問だけでなく、学年主任、スクールカウンセラー、外部の相談窓口など、複数ルートが実際に機能しているかどうかです。

この三つがすべて欠けている場合、その部活は「スポーツハラスメントの温床」になりやすい、と考えてよいでしょう。

セクハラ・ジェンダー配慮が抜け落ちる場面

パワハラに比べて、セクハラやジェンダー配慮の問題は、学校現場でもまだ十分に共有されているとは言えません。
女子部員のユニフォームや体型について、不必要なコメントをしてしまう。

男女混成チームやマネージャーに「女の子なんだから」「男なんだから」と性別役割を押し付ける。
更衣室周辺での不用意な立ち位置や、LINEなどでの個人的なやりとりも、状況によってはスポーツハラスメントになりうる場面です。

「昔はこれくらい普通だった」という感覚はいったん脇に置き、今目の前にいる子どもたちの感覚を基準に考える。
これが今の時代に求められる指導者の姿勢だと、なおじは感じています。

生徒・保護者・若手顧問が取れる具体的な防衛策

生徒ができる「小さなSOS」と記録の残し方

生徒の立場からできる一番の行動は、一人で抱え込まないことです。
信頼できる友人や家族に、どんな言葉をかけられたか、どんな行為があったかを話してみてください。

可能であれば、日付・場面・発言内容をメモに残したり、チャットのスクリーンショットを保管したりして、後から振り返れるようにしておくとよいでしょう。
「自分が弱いからつらいと感じているのでは」と思い込まず、「これはおかしいのでは」と感じたら、その感覚を大事にしてほしい。

長年、教室で子どもたちと向き合ってきた立場から、なおじはそう強く伝えたいです。

保護者が学校・顧問と向き合う時のポイント

保護者として動く場合、まず意識したいのは、感情と事実を分けて伝えることです。
「子どもがこう感じている」「具体的にはこういう言葉・行為があった」と整理して相談すると、話が進みやすくなります。

「顧問を責める」ことだけが目的になってしまうと、学校側も防御的になりがちです。
「子どもたちが安全に活動できる環境を一緒につくりたい」というスタンスを前面に出すと、建設的な対話につながります。

学年主任、管理職、スクールカウンセラーなど、複数の相談ルートを把握しておくと安心です。

👉関連記事:部活動の教育的意義と歴史|明治の校友会から令和の改革まで
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若手顧問が「同調圧力」から距離を取るコツ

若手顧問にとって一番難しいのは、**「自分はおかしいと思っているのに、ベテランのやり方に合わせざるをえない」**状況です。
ここで大事なのは、一人で背負わないことと、「具体的な提案」として上司に伝えること。

「このメニューは必要だと思うが、言い方を変えられないか」「保護者への説明の仕方を一緒に考えたい」といった形で相談すると、意見として受け取られやすくなります。
校内で信頼できる同僚や管理職に、自分の戸惑いを率直に打ち明けることも有効です。

若手の違和感は、学校文化を変えていく大事なサインです。
「昔からこうだから」という言葉に飲み込まれないよう、自分の感覚を守りながらできる範囲で動いていくことが求められます。

日大三高や広陵高の事例から見える構造的な危うさ

日大三高野球部問題に見える「沈黙の構造」

近年大きく報じられた日大三高野球部の問題では、個々の行為そのものだけでなく、**「なぜ誰も声を上げられなかったのか」**という構造が問われました。

強豪校・伝統校であればあるほど、部の内側で起きていることに外部が口を挟みにくくなります。
生徒にとっても、「チームを裏切るのではないか」「自分の進路に影響するのではないか」という不安が働きます。

その結果、問題がわかっていても沈黙が続く。
ブラック部活の背景には、こうした「沈黙の構造」が存在します。

👉関連記事:日大三高野球部問題の全容|書類送検から活動休止まで
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広陵高・仙台育英の事例が示す共通点

広陵高校では、上級生による暴力や不適切行為が報じられました。
仙台育英サッカー部では、「構造的いじめ」が認定され、全国大会出場を辞退するという重い決断がなされています。

詳細はそれぞれ異なりますが、三つの事例に共通しているのは、勝利への期待・伝統校としてのプライド・地域やOBからのプレッシャーです。
この三つが重なると、「勝つこと」だけが価値になりやすく、スポーツハラスメントが見逃される土壌ができます。

👉関連記事:仙台育英サッカー辞退|構造的いじめの理由を元教師が解説

「勝利至上主義」という社会全体の罠

構造的な問題を考えるとき、学校だけに原因を求めるのは不十分です。
大会で勝てば大きく報じられ、学校説明会でも「部活動実績」がアピールポイントになる。

一方で、日々の練習のあり方や、負けたときにどんな言葉がかけられているのかには、なかなか光が当たりません。
必要なのは、「勝つこと」自体を否定することではなく、「勝つことだけ」が価値になる風土を少しずつほぐしていくことです。

花道で 顔上げぬまま 拍手受け

子どもたちが安心して声を上げられる環境を、大人側が用意していくことが、ブラック部活やスポーツハラスメントを減らす第一歩になると、なおじは考えています。

よくある質問(Q&A)

Q1:どこから学校に相談すべきかわかりません

「部活の時間が近づくと動悸がする」「夜眠れない日が続く」「学校に行きたくなくなる」といった状態は、すでに心身への影響が出ているサインです。
「早すぎる相談」というものはありません。

まず保護者や信頼できる大人に話し、そこから学年主任や学校の相談窓口につないでもらうのが、一番自然なルートです。

Q2:顧問に悪意はなさそうですが、言い方がきつくてつらい場合は?

悪意があるかどうかと、受け手がつらいかどうかは、別の問題です。
「先生は自分たちのために言ってくれているのだろう」と感じつつも、毎回の叱責で心がすり減っているケースはあります。

その場合、部員同士で気持ちを共有したうえで、学級担任や別の先生を通じて、具体的な言い方の例を伝えてもらう方法があります。
一対一で直接言うのが難しければ、「第三者をはさむ」のも大切な工夫です。

Q3:強豪校を選ぶと、ハラスメントのリスクも高くなりますか?

強豪校だから必ずリスクが高いとは言えません。
ただし、「勝たなければならない」というプレッシャーが強い環境ほど、無理が生じやすいのは事実です。

進学を検討するときは、試合実績だけでなく、普段の練習の雰囲気や指導者の言葉かけ、生徒の表情もよく観察してみてください。
在校生や保護者の話を聞ける機会があれば、参考にするとよいでしょう。

Q4:部活の影響で成績や生活リズムが崩れてきた場合は?

部活動は教育活動の一環であり、学習や健康より優先されるものではありません。
成績が急に下がった、朝起きられなくなった、家でほとんど口をきかなくなった場合、部活の指導が負担になっている可能性があります。

「部活をやめるか続けるか」の二択ではなく、「指導のあり方を見直してもらう」「一時的に活動を減らす」という中間の選択肢も含めて、学校と話し合ってみてください。

👉関連記事:部活動のパワハラ・いじめ|どう防ぐべきか元教師が語る

筆者紹介|なおじ

なおじは元社会科教師として教育現場に35年間携わり、指導主事を5年、校長を11年務めました。
退職後もボランティアで子どもたちに学習を教えています。

バスケットボール部顧問を十数年務めた経験から、部活動の指導の現場と空気感を知る立場として、スポーツと教育の問題を発信しています。

現在は8つのブログでドラマ芸能政治歴史スポーツ学び書評を書いています。

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