こんにちは、なおじです。
不登校のお子さんを持つ保護者の方から「担任の対応に疑問がある」という声をよく耳にします。
実は教師の多くは善意で動いていますが、多忙と組織的制約が重なり、結果的に失敗してしまうケースが少なくありません。
この記事では、元社会科教師35年の経験から、担任がやってしまいがちな失敗例7つと、その背景にある構造的問題を整理していきます。

【この記事でわかること】
- 不登校対応で担任が失敗してしまう組織的・構造的な背景
- アポなし家庭訪問や励まし言葉が逆効果になる心理的メカニズム
- 成績の話・他者比較・担任の抱え込みなど7つの典型的失敗パターン
- 教師側の「なぜそうしてしまったか」の内部事情と改善策
- 保護者と教師が協力関係を築くための具体的アプローチ
不登校対応で担任が失敗する構造的背景
不登校対応の失敗は、個々の教師の能力不足というより、学校組織全体の構造的問題が大きく影響しています。
担任教師は通常、30~40人の学級運営、授業準備、保護者対応、部活動指導、校務分掌などを並行してこなしています。
その中で不登校児童への対応も求められますが、明確なマニュアルや研修が不足しているケースが多く、「とりあえず様子を見る」「家庭訪問する」という表面的な対応に終始してしまうのです。
多忙が生む「対症療法」の罠
なおじ自身も中学校教師時代、不登校生徒への対応で「これでよかったのか」と悩んだ経験が何度もあります。
善意で動いても、結果的に子どもを追い詰めてしまったケースもありました。
教師は「何かしなければ」という焦りから、かえって適切な判断ができなくなることがあります。
組織的支援体制の不在
学校組織では「担任が責任を持つべき」という雰囲気があり、担任は孤立しがちです。
しかし不登校対応は専門的知識が必要で、担任一人では限界があります。
管理職・養護教諭・スクールカウンセラーとの連携が不可欠ですが、現実には「担任任せ」になっているケースが多いのです。
👉関連記事:3歳児が命にかかわることをするとき|現実的なしかり方
失敗例①:アポなし家庭訪問で子どもを追い詰める

最も多い失敗例が、事前連絡なしの突然の家庭訪問です。
教師側は「様子を見に行こう」「顔を見せれば安心するだろう」という善意で訪問します。
しかし、不登校の子どもにとっては突然の訪問が恐怖やプレッシャーになります。
実は、なおじも30歳代の時にこの失敗を犯しました。
そのとき、もっと知識があれば、と今でも悔やまれます。
なぜ教師はアポなし訪問をしてしまうのか
教師は「家にいるはずだから」「電話だと断られる」という発想で、突然訪問してしまいがちです。
特に昼間に訪問すると、子どもは「学校に行っていない自分を責められる」と感じ、部屋に閉じこもったり、保護者との関係が悪化したりします。
なおじの失敗体験
なおじが中学校で担任をしていた頃のことです。
空き時間があったので、ある不登校生徒に「励ましのつもりで」突然訪問してしまいました。
その後、その生徒とは完全に連絡が取れなくなってしまいました。
後で保護者から「子どもが怖がっている」と聞き、自分の配慮不足を痛感しました。
改善策: 訪問前に必ず保護者に連絡し、子ども本人の意向を確認する。訪問を拒否された場合は、手紙やメールなど別の方法でつながりを保つことが重要。
失敗例②:「頑張れ」「待ってるよ」の励ましが逆効果
担任がよく使う「学校で待ってるよ」「みんな心配してるよ」という言葉も、実は子どもにプレッシャーを与えるケースが多いです。
不登校の子どもは「学校に行けない自分」に強い罪悪感を抱いています。
励ましの言葉は、その罪悪感をさらに強めてしまうのです。
励ましが罪悪感を増幅させる心理メカニズム
特に「いつでも来ていいからね」という言葉は、子どもに「早く来なければ」という焦りを生みます。
なおじの同僚教師も、善意で毎週手紙を送り続けましたが、その生徒は「返事ができない自分がダメだ」と自己否定を深めてしまいました。
改善策: 「無理しなくていいよ」「あなたのペースで大丈夫」という肯定的なメッセージに切り替える。登校を前提としない声かけが重要。
👉関連記事:3歳児がわざと悪いことをしたとき|正しい叱り方のコツ
失敗例③:成績や進路の話を早い段階でしてしまう

不登校初期に「このままだと進級が」「受験が心配だ」と成績や進路の話をするのも、典型的な失敗パターンです。
保護者は進路を心配しますが、子ども本人はまだ「学校に行けない今の自分」で精一杯です。
将来の話が絶望感を深める理由
将来の話をされると「自分はもうダメだ」と絶望感を深めます。
なおじの同僚教師が、不登校2週間目の不登校生徒に「このままだと留年の心配も」と言ってしまったため、その後完全に心を閉ざしてしまったケースを知っています。
焦りから出た言葉でしたが、完全に逆効果でした。
改善策: 回復期(数ヶ月経過後)まで進路の話は控える。まずは心の安定を最優先することです。
失敗例③と表裏一体:「学習の遅れ」への対応が生むジレンマ

不登校初期に成績の話をしてはいけないと前述しましたが、実は**保護者の最大の心配は「学習の遅れ」**です。
この心配に応えようとする担任の善意が、結果的に子どもを追い詰めてしまうケースがあります。
なおじ自身も、この矛盾に長年悩まされてきました。
なおじの失敗体験:プリント配布の葛藤
なおじが中学校で不登校生徒を担当していた頃、保護者から「せめて勉強だけは」という要望を受けました。
「もしできたら」という前置きで、週2回程度の家庭訪問時にプリントを渡し、次回訪問時に回収して丸をつけて返却していました。
保護者は、確かに安心してくれました。
でも、子供はどうだったのでしょうか。
今考えると、プリントを渡すこと自体が子どもにプレッシャーを与えていたのではないかという気がしています。
「学習の遅れ」と「心の回復」は相反する目標
「学習の遅れを取り戻す」と「エネルギーの回復に重点を置く」という2つの目標は、実は相反する関係にあります。
不登校の子どもは「勉強ができない自分」に強い罪悪感を抱いています。
プリントを渡されると「やらなければならない」というプレッシャーを感じ、できなかった時に「また自分はダメだった」と自己否定を深めてしまうのです。
保護者の「学習の遅れ」不安にどう応えるか
保護者が「学習の遅れ」を心配するのは当然です。
担任としても「何かしなければ」という焦りがあります。
しかし、ここで重要なのは優先順位を明確にすることです。
段階的対応の原則:
- 初期段階(1~2ヶ月): 心の安定を最優先。学習の話は一切しない
- 回復期(3ヶ月~): 子ども本人が「勉強したい」と言い出したら、少しずつ提供
- 復帰準備期: 学習支援と並行して、別室登校などの選択肢を提示
【H3-4】「学習支援」を名目にした訪問の危険性
なおじの経験では、「プリントを届ける」という名目の訪問は、実は教師側の「何かしている」というアリバイ作りになっていたのではないかと反省しています。
子どもの心の回復より、保護者や管理職への説明を優先してしまっていたのです。
改善策:
- 学習支援は、子ども本人が希望した場合のみ提供する
- プリントではなく、オンライン教材や録画授業など「やってもやらなくてもいい」形で提供
- 「今は心の充電が最優先。勉強は後からいくらでも取り戻せる」と保護者に明確に伝える
【学習支援のタイミングと方法】
| 段階 | 時期の目安 | 子どもの状態 | 学習支援の方法 | やってはいけないこと |
|---|---|---|---|---|
| 初期段階 | 1~2ヶ月 | 不安・罪悪感が強い | 学習の話は一切しない | プリント配布・進度の話 |
| 回復期 | 3~6ヶ月 | 少し落ち着き始める | 本人希望があれば軽く提供 | 定期的な課題提出要求 |
| 復帰準備期 | 6ヶ月~ | 登校意欲が芽生える | オンライン・別室学習の選択肢提示 | 「遅れを取り戻せ」の圧力 |
👉関連記事:仙台育英サッカー辞退|構造的いじめの理由を元教師が解説
その他の失敗例と改善策

失敗例④:「他の子は来てるのに」と比較してしまう
「クラスのみんなは頑張って来てるよ」という他者との比較も、子どもを深く傷つけます。
不登校の子どもは「自分だけができない」という劣等感に苦しんでいます。
比較されることで、その劣等感がさらに強まり、自己肯定感が下がってしまうのです。
改善策: 他者との比較は絶対にしない。「あなたはあなたのペースでいい」という個別性の尊重を徹底する。
失敗例⑤:担任一人で抱え込み、組織的支援を怠る
担任が一人で対応を抱え込み、管理職やスクールカウンセラーとの連携を怠るのも、大きな失敗です。
学校組織では「担任が責任を持つべき」という雰囲気があり、担任は孤立しがちです。
なおじ自身も若い頃、「自分がなんとかしなければ」と一人で抱え込み、結果的に対応が後手に回ってしまったことがあります。
改善策: 初期段階で管理職・養護教諭・スクールカウンセラーと情報共有し、チーム対応を徹底する。
失敗例⑥:保護者の不安に共感せず「様子を見ましょう」で終わる
保護者が不安を訴えているのに、担任が「もう少し様子を見ましょう」と具体的な支援を示さないのも、信頼を失う原因です。
保護者は「学校が何もしてくれない」と感じ、担任への不信感が募ります。
担任側は「まだ判断できない」と慎重になっているのですが、その意図が伝わらないのです。
改善策: 「様子を見る」だけでなく、「週1回の電話連絡」「月1回の面談」など具体的なアクションを提示する。
失敗例⑦:「学校に来ること」を最終目標にしてしまう

担任が「とにかく学校に来させる」ことを目標にすると、子どもの心の回復が後回しになります。
不登校対応の本質は「学校復帰」ではなく、子どもの自己肯定感の回復です。
無理に登校を促すと、かえって症状が悪化します。
改善策: 「学校復帰」ではなく「心の安定」を第一目標にする。別室登校・保健室登校なども選択肢として提示する。
【表:不登校対応の失敗例と改善策一覧】
| 失敗例 | なぜ失敗するか | 改善策 |
|---|---|---|
| アポなし家庭訪問 | 子どもが恐怖を感じる | 事前連絡・本人意向確認 |
| 「頑張れ」の励まし | 罪悪感を増幅させる | 「無理しなくていい」に変更 |
| 成績・進路の早期言及 | 絶望感を深める | 回復期まで控える |
| 他者との比較 | 劣等感を強める | 個別性の尊重を徹底 |
| 担任の抱え込み | 対応が後手に回る | チーム対応を徹底 |
| 「様子を見る」だけ | 保護者の不信感 | 具体的アクション提示 |
| 登校を最終目標化 | 心の回復が後回し | 心の安定を最優先 |
保護者と教師が協力関係を築くために

不登校対応の失敗は、教師個人の問題ではなく、学校組織全体の構造的課題です。
担任も悩み、葛藤しながら対応しています。
保護者と教師が対立するのではなく、子どもを中心にした協力関係を築くことが、最も大切です。
保護者ができる具体的アプローチ
保護者から「こうしてほしい」と具体的に伝えることで、担任も動きやすくなります。
例えば「週1回、電話で様子を共有してほしい」「訪問は事前に連絡してほしい」など、明確な要望を伝えることが重要です。
教師側が意識すべきこと
教師は「自分一人で解決しなければ」という責任感から、かえって適切な判断ができなくなることがあります。
管理職やスクールカウンセラーと早期に連携し、組織的な支援体制を整えることが不可欠です。
👉関連記事:部活動のパワハラ・いじめ|どう防ぐべきか元教師が語る
【Q&Aで振り返る不登校対応】
Q1:担任が何もしてくれないのはなぜ?
担任が「何もしていない」ように見えるのは、多忙と経験不足が原因です。実際には悩んでいても、具体的な方法がわからず動けないケースが多いです。保護者から「こうしてほしい」と具体的に伝えることで、担任も動きやすくなります。
Q2:担任を変えてもらうことはできる?
担任交代は学校運営上、非常に難しいのが現実です。まずは管理職(教頭・校長)に相談し、副担任や学年主任のサポート体制を組んでもらう方が現実的です。
Q3:不登校の回復期はいつから?
不登校の回復期は、子どもが「外に出たい」「何かしたい」という意欲を見せ始めた時です。焦らず、子どものペースを尊重することが最も重要です。
Q4:学習の遅れはどうすればいいの?
保護者の最大の心配は「学習の遅れ」ですが、不登校初期(1~2ヶ月)は心の安定を最優先すべきです。勉強は後からいくらでも取り戻せますが、心の傷は深まると回復に時間がかかります。子ども本人が「勉強したい」と言い出すまで、学習の話は控えることが重要です。
【筆者紹介|なおじ】
元社会科教師として35年間教壇に立ち、小学校・中学校の両方で不登校生徒の対応を多数経験してきました。