令和8年9月6日(日)最終更新
丸い茅葺き屋根が、かがくの里の風景にすっと収まっています。
かがくの里の母屋は、建築家・隈研吾氏が設計し、2025年に完成した茅葺きの建物です。2022年3月に始まったプロジェクトは、材料集めから内装までおよそ3年をかけて進められました。
屋根の上には約5,000束の茅が重なり、棟には植物の根を使って固定する「芝棟」の工夫まで施されています。これは、ただ昔風の家を建てた話ではありません。草を育て、刈り、葺き、また手入れする。里山で続いてきた仕事が、一つの母屋に集まっています。

この記事のポイント
Q1. かがくの里の母屋はいつ完成しましたか?
かがくの里の母屋は、3年をかけて2025年10月に完成しました。茅葺き屋根は2025年4月に完成し、同年11月には「所さんの目がテン!」で隈研吾氏設計の母屋の完成お披露目が行われました。
Q2. かがくの里の母屋は見学や宿泊ができますか?
かがくの里は番組の実験・収録に使われる私有地で、一般公開の観光施設ではありません。母屋を含む敷地内の一般見学や一般向けの宿泊はできないため、無断で立ち入らないようにしましょう。
Q3. かがくの里の母屋の総工費はいくらですか?
日本テレビなどの公式公開情報では、かがくの里の母屋の総工費は公表されていません。約5,000束の茅を使った円形の茅葺き屋根や内装工事が行われましたが、正確な金額は確認できません。
かがくの里の母屋とは?隈研吾設計で2025年に完成

かがくの里の母屋は、建築家・隈研吾氏が設計した円形の茅葺き屋根をもつ建物です。里山再生の現場で育まれてきた素材や技術を、これからも使い続けるための拠点として生まれました。
母屋プロジェクトは2022年に始動
母屋プロジェクトは2022年3月に始まりました。かがくの里が続けてきた里山再生の中で、隈研吾氏が設計する母屋づくりが動き出したのです。
2024年8月に工事が始まり、屋根には約5,000束の茅が使われました。最後の仕上げでは、棟に土を載せ、植物の根で固定する芝棟づくりも行われています。
茅を葺く手が止まれば、屋根はできません。草を刈る人、屋根を仕上げる人、里を守る人。その手の数が、丸い屋根の下に重なっています。
2025年に茅葺き屋根と母屋が完成

茅葺き屋根は2025年4月に完成し、同年11月には完成した母屋が番組で紹介されました。
「2025年4月に完成」と「2025年に完成」という二つの表現が見つかるのは、指しているものが少し違うからです。4月に仕上がったのは茅葺き屋根で、その後に内装などの工程が続き、母屋全体が完成しました。
2026年には、所ジョージさんと奥田民生さんが母屋を訪れる企画も放送されています。完成した建物は、そのまま番組の中で使われ、里の新しい時間を受け止めています。
里山再生の拠点として生まれた建物
母屋が建った場所には、その前から田畑があり、雑木林があり、里山を手入れしてきた人たちがいました。
かがくの里が母屋を建てるまでに、田畑や雑木林でどんな再生を続けてきたのかも知ると、建物の見え方が変わります。
👉関連記事:かがくの里10年・100回超放送の里山再生記録
2014年から続く取り組みを追うと、母屋が突然現れた建物ではないことが分かります。
なおじには、この母屋は里山を学ぶための大きな教材に映ります。屋根の上の茅だけでなく、その茅を支える草地や、そこへ手を入れる人の姿まで見えてくるからです。
隈研吾氏が茅葺きと円形屋根に込めたもの

母屋の丸い屋根には、約5,000束の茅が使われています。茅を重ね、刈り込み、最後に芝棟をつくる。その工程を追うと、屋根は飾りではなく、何人もの手で形になった仕事だと分かります。
茅葺きは景観ではなく里山の循環
茅葺き屋根に使う茅は、草地を刈り、育て、また使う循環の中から生まれます。
屋根に茅を使うということは、屋根だけの話ではありません。茅が育つ場所を守り、刈る人の技をつなぎ、次の屋根を葺ける状態を残すことでもあります。
茅が屋根に上がるまでには、長い時間があります。その時間を思うと、ふわりと厚く見える茅の層も、少し違って見えてきます。
丸い屋根が支える構造と風景

屋根は曲面を生かしたシェル構造です。日本テレビは、上から加わる力を曲面に沿って分散させ、円形の特性によって内向きに力が働く仕組みだと紹介しています。
丸い茅葺き屋根が里山の中に現れたとき、まず目に残るのは、その大きさより曲線でした。力を受け止めるための形が、そのまま建物の表情になっています。
自然に触れながらつくる建築
母屋の内装には、壁紙づくりの工程もありました。番組では、楮を原料にした西ノ内紙を壁紙に使う様子が紹介されています。
茅、木、和紙。材料の名前だけを並べると素朴ですが、そこには育てる人、加工する人、仕上げる人の仕事があります。
完成した母屋を見上げると、なおじの目には建物の形だけでなく、材料が集まるまでの手間まで浮かんできます。
母屋の費用・総工費は公表されている?
隈研吾氏が設計し、約5,000束の茅を使った丸い屋根を載せる。しかも、材料集めから内装までおよそ3年がかりです。
「これは、いったいいくらかかったのか」
そう思うのは当然でしょう。
確認できる日本テレビなどの公式公開情報には、設計費・建築工事費・内装費などを合計した母屋の総工費は示されていません。ただ、金額が出ていないからといって、ここで話を終えると読者には不親切です。
総工費を知りたい人へ、まず確認できること
茅葺き屋根は、一般的な屋根の葺き替えとは費用の桁が変わることがあります。茅葺きの全面葺き替えでは、40坪前後の住宅で約1,500万〜2,500万円という相場例があり、職人への取材でも屋根全体の葺き替えに約2,000万円かかるという紹介があります。
ここで大事なのは、これは既存の茅葺き民家の屋根を葺き替える場合の目安だという点です。かがくの里の母屋は、古い屋根の修繕ではありません。円形の屋根を新たにつくり、約5,000束の茅を葺き、構造を組み、内装には和紙づくりまで取り入れた新築プロジェクトでした。
屋根だけでも、一般的な茅葺き民家の葺き替えに近い、あるいはそれ以上の費用がかかっていても不思議ではありません。
なおじが考える母屋の費用感
これは公式発表ではなく、なおじの個人的な見立てです。
かがくの里の母屋は、茅葺き屋根だけでなく、円形のシェル構造、設計、基礎・躯体、内装、材料の加工・運搬、足場、職人の仕事まで伴います。一般的な家屋の「坪単価」だけで測れる建物ではありません。
なおじは、総工費は少なくとも数千万円規模で、1億円前後、あるいは条件によってはそれを超えていてもおかしくないと見ています。
もちろん、これは正確な工事費を示す数字ではありません。番組側や関係者が公式に総額を出していない以上、「○億円だった」と断定することはできません。
ただ、約5,000束の茅が重なる屋根を見上げると、これは数百万円の小屋づくりではない、と感じます。里山の素材、伝統技術、特殊な設計、何年にもわたる仕事。そのすべてが、あの丸い屋根の下に入っているのです。
金額を見る目と、母屋を見る目
費用を問うことは、決して野暮なことではないでしょう。著名建築家が関わる建築なら、どれだけの資金が使われたのかを知りたくなるのは自然です。
一方で、かがくの里の母屋は、完成した瞬間だけで価値が決まる建物でもありません。茅を刈る草地があり、屋根を葺く職人がいて、傷めば手入れする人がいる。屋根の維持そのものが、里山との関係を続ける仕事になります。
総工費が公式に示されたなら、もちろん数字を確かめたいところです。それまでは、約5,000束の茅と3年がかりの工程を前にして、「これは相当な建築だった」と受け止めるのが、いちばん正直な見方ではないでしょうか。
母屋はどこにある?見学できる?
母屋は、茨城県常陸太田市町屋町にあるかがくの里の敷地内にあります。ただし、番組の実験・収録に使われる私有地であり、一般公開の観光施設ではありません。
母屋はかがくの里の敷地内にある
かがくの里は茨城県常陸太田市町屋町1026-2にあります。母屋はその敷地内に建てられています。
所在地、公共交通機関や車で周辺へ向かう際の確認方法、近隣で立ち寄れる公開施設を知りたい場合は、親記事を参考にしてください。
👉関連記事:かがくの里の場所と行き方は?母屋完成も解説
一般公開の有無や、私有地の周辺を訪れる際に気を付けたいこともまとめています。
一般公開ではないため見学目的の訪問はできない
テレビで見た母屋を、現地で見たいと思うのは自然なことです。
しかし、かがくの里は一般公開されていません。敷地への無断立ち入りや、周辺での迷惑駐車は避ける必要があります。
番組を見ること、里山の仕組みを知ること、周辺の公開施設を訪れること。その距離から母屋を眺めるほうが、この場所で続く活動を傷つけません。
番組でのお泊まりと一般宿泊は別の話
2026年には、所ジョージさんと奥田民生さんが母屋を訪れ、お泊まりする企画が放送されました。
これは番組内で行われた企画です。母屋が一般向けの宿泊施設になったわけではなく、宿泊予約を受け付けている場所でもありません。
二人が屋根の下で過ごした番組の時間と、地域の中で静かに続く里の時間。その二つは分けて受け止めたいところです。
茅葺き母屋がつなぐ生物多様性と暮らし

完成した茅葺き屋根に、昆虫がすみ始めた。番組は2025年、隈研吾氏設計の母屋にいち早くすみついた昆虫を取り上げました。
新しい屋根なのに、もう小さな生き物が居場所を見つけている。ここに、かがくの里らしいおもしろさがあります。
茅場を維持することは草地を守ること
茅葺き屋根は、茅を刈って終わりではない。次に使う茅が育つ場所を残し、また刈り、また屋根へつなげていく必要があります。
屋根の上にある茅は、草地から切り離された単なる材料ではないんです。里山の中で育った草が、形を変えて母屋を守っています。
自然共生サイト認定が示すもの
かがくの里は、環境省が2023年度から始めた自然共生サイトの令和5年度前期認定を受けています。日本テレビは、科学者や地域住民とともに続けてきた里山再生の取り組みが、生物多様性の保全が図られている区域として認定されたと伝えています。
認定の文字だけを見ると、少し堅く感じるかもしれません。けれども、その背景には、田畑を耕し、草を刈り、生き物が戻る環境を整えてきた時間があります。
建物を残すのではなく、手入れの文化を残す
番組が映したのは、完成直後の屋根に入り込んだ昆虫でした。新しい茅の隙間に、もう小さな生き物が居場所を見つけている。
屋根を見上げたとき、なおじの目には建築の完成だけでなく、その隙間から始まる次の季節まで見えてきます。
里山の生き物を、子どもと一緒にもっと身近に知りたくなった方には、図鑑の記事もあります。
👉関連記事:かがくの里図鑑レビューと里山学習おすすめ教材まとめ
番組から生まれた図鑑の内容と、自由研究や家庭学習での使い方を紹介しています。
よくある質問
かがくの里の母屋はいつ完成しましたか?
母屋は2025年10月に完成しました。茅葺き屋根は2025年4月に完成し、同年11月には番組で完成した母屋が紹介されています。
母屋の総工費はいくらですか?
確認できる日本テレビなどの公式公開情報には、母屋の総工費の具体額は見当たりません。一般的な茅葺き屋根の費用相場などを参考に、おおよその規模を考えることはできますが、かがくの里の母屋の正確な金額を断定することはできません。
隈研吾氏はなぜかがくの里に関わったのですか?
隈研吾氏は2022年に「所さんの目がテン!」へ出演した際、かがくの里の母屋設計を依頼されました。里の風景や里山の循環という考え方から着想を得て、自然と共生する母屋を構想したと番組公式は紹介しています。
母屋の屋根が丸いのはなぜですか?
母屋の屋根は、曲面を生かしたシェル構造です。上から加わる力を曲面に沿って分散させ、円形の特性を生かして建物を支える仕組みが紹介されています。
母屋の見学や宿泊はできますか?
かがくの里は一般公開の観光施設ではありません。敷地内の一般見学や一般向けの宿泊はできないため、無断で立ち入らないよう注意が必要です。
筆者紹介|なおじ

なおじは、公立小・中学校で約35年にわたり社会科教育に携わり、指導主事5年、校長11年を務めました。茨城県北部は校外学習でも何度も訪れた地域で、常陸太田市の里山と西山荘の風景はいまも記憶に残っています。
茅葺き屋根を見ると、なおじは建物の形だけでなく、草を刈る人、屋根を葺く人、その土地で暮らす人の手を思います。かがくの里の母屋も、里山を手入れする時間の上に立つ建物として読んでいます。